甲状腺疾患|ひろむら内科クリニック|矢野口駅の糖尿病内科・内分泌内科・内科

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甲状腺

甲状腺疾患|ひろむら内科クリニック|矢野口駅の糖尿病内科・内分泌内科・内科

甲状腺疾患の症状

甲状腺ホルモンが過剰になったり、不足したりすることで、多彩な症状が出現します。
当院では甲状腺ホルモンの当日検査も可能です。
以下のような症状やお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

甲状腺中毒症(ホルモン過剰)の症状

  • 安静にしているのに、脈が速い、胸がどきどきする
  • 食欲がありよく食べるのに、痩せてきた
  • 手が震える
  • 暑がりになり、よく汗をかく
  • いらいらする、落ち着きがなくなった
  • 下痢をする
  • 疲れやすい、だるい
  • 月経不順
  • 眼球が突出してきた(バセドウ病に特徴的な症状)

甲状腺機能低下症(ホルモン不足)の症状

  • 疲れやすくなってきた
  • 寒がりになってきた
  • 顔や手足がむくむ
  • 食欲がないのに太ってきた
  • 肌が乾燥する
  • 脈が遅くなってきた
  • 声がかれる

甲状腺腫瘍の症状

  • 首(前頸部)がはれてきた
  • 首の圧迫感、違和感がある

甲状腺の役割

甲状腺は、首の喉仏のすぐ下にあり、気管に張り付くように位置し、蝶が羽を広げたような形をしています。重さは、15〜20g程度の小さな臓器です。甲状腺は、ヨウ素を原料として、甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素を含むサイロキシン(T4)と、 3つのヨウ素を含むトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。T3とT4の多くは、たんぱく質と結合して血液内に存在します。実際に身体に作用しているのは、遊離型のホルモンである遊離T3(FT3)や遊離T4(FT4)であり、血液検査ではこちらを測定しています。甲状腺ホルモンは、1) 細胞の新陳代謝を活発にする、2) 成長や発達を促進する、3) 交感神経を活発化する、など役割が存在し、高くても低くても、体に支障をきたします。

甲状腺疾患の特徴

甲状腺機能異常症には、血液中の甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺中毒症と、不足する甲状腺機能低下症があります。甲状腺中毒症の原因として、甲状腺機能亢進症と破壊性甲状腺中毒症があります。甲状腺機能亢進症は、甲状腺内での甲状腺ホルモン合成・分泌が高まり、バセドウ病や機能性結節などがあります。破壊性甲状腺炎は、その名の通り甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出てくることで発症し、無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎があります。甲状腺機能低下症の原因となる代表的疾患としては、橋本病があります。

甲状腺機能による甲状腺疾患の分類

ホルモン不足
甲状腺機能低下症
ホルモン正常 ホルモン過剰
甲状腺中毒症
・橋本病 ・橋本病
・良性腫瘍
・悪性腫瘍
甲状腺機能亢進症 破壊性甲状腺炎
・バセドウ病
・機能性結節
・妊娠一過性甲状腺
 機能亢進症
・亜急性甲状腺炎
・無痛性甲状腺炎

バセドウ病

バセドウ病とは

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが上昇する甲状腺中毒症のなかで、最も頻度が高く、20歳〜50歳の女性に発症しやすい疾患です。免疫システムの異常で自分自身に対する抗体が産生され、組織や細胞が攻撃されてしまう疾患を「自己免疫疾患」と言います。バセドウ病も、自己免疫疾患の一つであり、抗TSH受容体抗体(TRAb, TSAb)が産生され甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に産生されます。現在でも、その明らかな発症の原因は確定しておりませんが、遺伝的な因子と環境因子が関係していると考えられています。

症状

Merseburg(メルセブルグ)の3徴という有名な症状として、1) 甲状腺腫(甲状腺が腫れる) 、2) 頻脈、3) 眼球突出があり、前の2つの徴候は、バセドウ病の80%以上の方でみられます。その他の症状としては、疲れやすい、手が震える、汗がたくさんでる、体重が減る、いらいらする、下痢などがあります。特殊な病態としては、炭水化物の多い食事の後や運動後などに手足が突然動かなくなる発作(周期性四肢麻痺)があり、アジア人の男性に多いとされています。甲状腺機能が十分に管理されない場合には、「甲状腺クリーゼ」といった、意識障害、発熱、消化器症状、心不全などの症状を伴う重症の疾患を発症することもあり、甲状腺ホルモンを安定させることが大切です。

治療

治療は大きく分けて、1) 薬物療法、2) アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法) 、3) 手術(甲状腺摘出術) の3つがあります。当院では、治患者様の性別、年齢、社会的な状況、病状などを考えて、ご相談しながら、治療方針を決定していきます。アイソトープ治療や手術が考慮される場合には、他院にご紹介とさせていただきます。

1.薬物療法
バセドウ病と診断した際に、すぐに外来で治療開始可能であることもあり、まずは薬物療法で治療開始することが多いです。甲状腺ホルモンの合成を抑える薬として、抗甲状腺薬、ヨウ化カリウムがあります。抗甲状腺薬には、チアマゾール(メルカゾール®︎) とプロピルチオウラシル(チウラジール®︎・プロパジール®︎) があります。その副作用は、かゆみ・皮疹、肝機能異常、無顆粒球症などがあり、投与開始後2週間から3か月に生じやすいことから、原則として2週に1回3か月間は、血液検査および診察を行っていきます。抗甲状腺薬は、投与開始後2〜3週間程度で効果が現れ、その後2〜3か月程度で甲状腺ホルモンが安定してきます。その後は、数年程度で薬を減量でき、主治医と相談して中止を検討できる場合もあります。中止した場合も、寛解状態(薬なしで病状が安定する) が継続せず、再発する可能性もありますので、定期的な経過観察が必要です。抗甲状腺薬を長期内服していても中止できない場合、副作用が出現する場合、早期に寛解を希望される場合には、アイソトープ治療や、手術が検討されます。
2.アイソトープ治療
(放射性ヨウ素内用療法)
アイソトープ(放射性ヨウ素)治療はヨウ素の放射性同位体を服用することで、甲状腺内に取り込み、甲状腺を壊すことにより甲状腺ホルモンを低下させます。基本的には外来で治療可能であり、カプセルを1回内服する治療です。投与開始後、1〜2か月程度で甲状腺腫が縮小しはじめ、2〜6か月程度かけて甲状腺ホルモンがさがってきます。甲状腺眼症状が増悪する可能性、再治療が必要になる可能性、妊娠・授乳中・18歳以下では原則治療ができない点、最低でも治療後6か月間避妊が必要な点など注意点もあります。
3.手術
甲状腺を摘出することで、甲状腺ホルモンが速やかに低下します。甲状腺腫が大きい場合、腫瘍を合併している場合、速やかに寛解状態としたい場合、妊娠を早く希望されている場合などに考慮されます。術後は、甲状腺ホルモン製剤の内服が必須となりますが、抗甲状腺薬と異なり、副作用は副作用が少なく、定期的な血液検査の頻度も少なくてすみます。

バセドウ病の治療の種類

薬物療法
(抗甲状腺薬)
アイソトープ治療
(放射性ヨウ素内用療法)
手術
(甲状腺全摘術)
利点
  • 簡便で、外来で治療可能
  • 診断時より治療開始可能
  • 薬物療法と比較し、短期間に治療効果が得られる
  • 副作用や合併症が少ない
  • 原則は、外来治療可能
  • 甲状腺腫が縮小する
  • 再発しずらい
  • 治療効果が早期に得られる
  • 再発が少ない
  • 抗甲状腺薬が早期に中止可
  • 甲状腺腫が縮小する
欠点
  • 治療が長期になりやすい
  • 副作用の可能性がある
  • 再発する可能性がある
  • 妊娠中は薬物の変更が必要になる場合がある
  • 眼症が増悪する可能性がある
  • 妊娠・授乳中はできない
  • 治療後一定の避妊期間が必要
  • 甲状腺機能低下症になる可能性がある
  • 再治療が必要になる事がある
  • 入院を要する
  • 傷跡が残る
  • 甲状腺機能低下症になる
  • 手術の合併症の可能性がある
  • 治療に技術を要する

橋本病

橋本病とは

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンがわずかに足りない潜在性を含めると、人口の約10%程度と高頻度であり、その原因のほとんどが橋本病(慢性甲状腺炎)と言われています。橋本病は、女性に圧倒的多く(男女比=1:20〜30)、年齢としては30~40歳代が多いです。橋本病も自己免疫疾患の中のひとつであり、自己抗体として、抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)があり血液検査で陽性となります。甲状腺に慢性の炎症が起こるのが橋本病ですが、炎症の状態によって、甲状腺ホルモンは正常の場合もあります。炎症が進行すると、甲状腺ホルモンが低下し、甲状腺機能低下症となります。

症状

甲状腺が大きくなり、腫れます(甲状腺腫)。橋本病の甲状腺腫の場合には、表面がごつごつとして、比較的硬いのが特徴です。炎症が進行して甲状腺ホルモンが不足すると、甲状腺機能低下症の症状が出てきます。その症状としては、だるい、疲れやすい、むくむ、寒がりになる、体重が増える、便秘、声が枯れるなどがあります。

治療

甲状腺ホルモンが低下している場合には、甲状腺ホルモン製剤(チラーヂンS®︎)を内服します。定期的に血液検査で甲状腺ホルモンをチェックして、適切な量となるように調整します。昆布などの摂取によって、甲状腺ホルモンが低下する場合もあり、その際には、食事の指導を行うことがあります。

無痛性甲状腺炎の合併

橋本病がある方が、甲状腺ホルモンが一過性に過剰となる場合があります。その際には、破壊性甲状腺炎であり甲状腺に痛みを伴わない無痛性甲状腺炎を併発していることがあります。甲状腺が破壊され、一過性に甲状腺ホルモンが漏出して、ホルモン過剰の症状を呈することがありますが、通常は1〜4か月程度で改善します。

亜急性甲状腺炎

破壊性甲状腺炎の中の一つで、甲状腺に痛みや発熱を伴い、甲状腺が破壊されることで甲状腺ホルモンが漏出し、一過性に甲状腺ホルモンが過剰となり、甲状腺中毒症の症状が出現します。男女比は1:3〜6と女性に多く、30〜50歳代に好発します。原因は明らかにされていませんが、風邪の症状のあとに起こることが多く、ウイルス感染が関連しているのではないかと考えられています。血液検査で、炎症反応の上昇や、超音波検査で痛い部分に一致した炎症の所見をみつけることで診断します。治療は、症状が強い場合には、副腎皮質ホルモン投与を行うことで速やかに改善します。ただし、再燃することもあるため、その際には慎重に減量していきます。軽症例では、非ステロイド性抗炎症薬の投与で様子をみます。再発は稀であり、通常は2〜3か月で改善します。

甲状腺腫瘍

甲状腺全体が大きくなった状態を、一般的に甲状腺腫と呼びます。その中で、部分的にしこりのようにはれる場合を「結節性甲状腺腫」といいます。結節性甲状腺腫の中には、良性と悪性が含まれますが、良性の結節には、腺腫様甲状腺腫や、甲状腺のう胞(のうほう)、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)が含まれます。濾胞腺腫が真の腫瘍であるのに対し、腺腫様甲状腺腫は甲状腺の細胞が増殖(過形成)している状態です。甲状腺腫瘍は無症状のことが多いため、頸部のしこりに偶然気付いたり、検診などで指摘されたりする方が増えています。多くは良性腫瘍であり、悪性腫瘍(甲状腺がん)は10%程度と決して多くはありません。悪性腫瘍には、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、低分化がん、髄様がん、未分化がんがあり、乳頭がんが全体の90%以上を占めています。甲状腺に腫瘍が見つかった場合、まず、超音波検査を行い、悪性が疑われれば、精密検査として穿刺吸引細胞診を実施して良悪性を鑑別します。良性腫瘍であれば、原則的には経過観察となります。悪性腫瘍の合併が疑われる場合には、手術を検討していきます。当院では、穿刺吸引細胞診は行っておりませんが、超音波検査による精査、経過観察は可能です。

妊娠と甲状腺疾患

甲状腺疾患は、妊娠可能な年齢の女性に多くみられ、妊娠前、妊娠中、産後の管理が重要になってきます。妊娠10週前後には、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが関係して、一過性に甲状腺ホルモンが上昇する、「妊娠一過性甲状腺機能亢進症」という疾患概念があります。バセドウ病がある方は、妊娠前から治療の方針を考えることが必要です。チアマゾール(メルカゾール®︎)は催奇形性との関連があることが報告されており、妊娠初期の投与は避けることが重要です。バセドウ病の原因といわれている、TSH受容体抗体(TRAb)は、胎盤を通過して胎児に移行し、新生児バセドウ病の原因となるため、小児科医との連携が重要になってきます。明らかな甲状腺機能低下症がある方は、不妊や流早産などのリスクがあがることがわかっています。また、胎児の神経発達に甲状腺ホルモンはとても重要ですが、妊娠初期には胎児の甲状腺ホルモンを作ることができず、多くは母親の甲状腺ホルモンに依存しています。そのため、甲状腺機能低下症がある方は、妊娠前から甲状腺ホルモンを安定させることが重要です。産後には、「出産後甲状腺機能異常症」という概念があります。出産後女性の5〜10%に出現して、出産後2〜4か月に破壊性甲状腺炎、4〜10か月にはバセドウ病を発症することがあります。